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生成AIを制作フローに組み込む: 選別・仕上げ・評価の設計

大槻 彩(ジャーナル編集長) 公開 2026.04.22 4分で読める No.579
生成AIを制作フローに組み込む: 選別・仕上げ・評価の設計


要点

  • 生成AIを制作フローに組み込む鍵は、生成そのものではなく、その前後の「選別」と「仕上げ」、そして「評価」の三点にある。
  • 選別は候補を捨てる基準を先に決め、判断のブレを圧縮する工程。
  • 仕上げは、生成物を人が触ることを前提に設計する。撮り直しではなく編集で持ち上げる。
  • 評価は、恣意的な良し悪しではなく、あらかじめ用意した評価データセットで測ることで、再現性を持たせる。

生成AIを使った制作は、いまや珍しくない。だが「デモとして動く」ものと「毎日の制作で回る」ものの間には、いまだに大きな距離がある。私たちが現場で確かめてきたのは、この距離を詰める作業のほとんどが、生成そのものではなく、その前後にあるという事実だ。

生成は工程の中心ではない

プロンプトを工夫すれば良いものが出る、というのは半分だけ正しい。実際の制作で問われるのは、まず候補の量だ。良い候補は、悪い候補の海のなかから拾い上げるしかない。したがって、生成AIを組み込むワークフローの中心は、「良い候補が偶然出るのを待つ工程」ではなく、「膨大な候補から捨て切る工程」に移る。

設計としてのプロンプトについては、業界全体の潮流としても、テンプレート化と再利用可能な指示設計が広がっている。プロンプトを「使い捨てのメモ」から「再現可能な資産」へ扱う流れが2024年以降定着した(業界アウトルックを参照)。

選別: 捨てる基準を先に決める

選別の設計は、時間ではなくルールで縮める。私たちは、案件ごとに「不採用の理由」を三つから五つに絞り込むところから始める。たとえば「文字が写り込んでいるもの」「人の指の破綻があるもの」「ブランドカラーから外れているもの」といった具合だ。この基準を最初に文章化して残しておくと、選別のばらつきが目に見えて縮む。

候補の点数ではなく、不採用の理由の数を先に決める——選別のコツはこれに尽きる。

仕上げ: 生成物は素材、最終品は編集の産物

生成物を「そのまま納品」できるケースは、実務では少ない。ほとんどの場合、色調・余白・被写体の位置・書体の載せ方——後段の編集で品質を積み上げる。この作業を「AIの弱さの尻拭い」ではなく、初めから工程の一部として設計する。撮影素材でも編集は必ず入るのだから、そこと同じ扱いにすればよい。仕上げの実務はプロンプトから納品へ: AI画像を実務品質に仕上げるまでで詳しく扱う。

評価: 恣意ではなくデータセットで測る

もっとも軽視されがちなのが、生成物の評価だ。良し悪しを毎回主観で決めていると、担当者が変わるたびに基準がずれる。私たちは案件ごとに「合格の例」「境界の例」「不合格の例」を各10点ほど用意し、評価データセットとして残している。新しい候補は、このデータセットのどこに位置するかで判断する。ハルシネーション対策の常設化については別記事にまとめた。

ただし、評価データセットも万能ではない。市場のトーンが変われば、合格例も更新が必要になる。データセットは季節ごとに見直すのが現実的だ。

反論: 生成AIは制作を安くしない

「生成AIで制作コストは下がる」という主張は、条件付きで正しい。単発の生成コストは確かに下がる。しかし、上で述べたとおり、選別と仕上げ、評価の工程は残る。むしろ、生成の速さに合わせて、これらの工程を回す速さも問われるようになる。総コストが下がるかどうかは、これらの工程を仕組みとして持てるかにかかっている。もっとも、単純な工数比較で語れる話でもない——出せる候補の幅が桁で変わるので、比較の軸そのものが変わる。

参照

  • Bommasani et al. “On the Opportunities and Risks of Foundation Models.” arXiv:2108.07258, 2021.
  • Weidinger et al. “Ethical and social risks of harm from Language Models.” arXiv:2112.04359, 2021.

生成AIは、制作の中心を「作る」から「選ぶ」「仕上げる」「測る」へ動かした。この移動を、道具の入れ替えとして扱うか、工程の再設計として扱うか——現場に残るのは、後者を選んだ人たちだ。

大槻 彩
ジャーナル編集長・Mosetti Studios 編集部
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