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茶の基礎

発酵・焙煎・製法 — 同じ茶樹から味が分かれる理由

緑茶も紅茶も同じチャノキの葉から作られます。萎凋・殺青・揉捻・酸化・焙煎という工程の違いが、なぜ味を分けるのかを整理します。

Mosetti Tea Studio 編集部 約4分
発酵・焙煎・製法 — 同じ茶樹から味が分かれる理由

要点

  • 緑茶も紅茶も黒茶も、もとは同じチャノキ(Camellia sinensis)の葉であり、違いを作るのは摘んでからの製法です。
  • 萎凋・殺青(さっせい)・揉捻・酸化・乾燥・焙煎という工程の組み合わせと順序が、六大茶類それぞれの個性を決めています。
  • ただし同じ工程名でも産地や作り手によって手のかけ方は幅があり、「この工程を経れば必ずこの味になる」と機械的に言い切れるものではありません。

一本の茶樹から六つの茶が生まれる理由

「緑茶と紅茶は別の木から採れるのでは」という質問は珍しくありませんが、実際には両方ともチャノキという同じ植物の葉から作られます。六大茶類の枠組みを扱った記事で見たように、味を分けているのは品種そのものより、摘採後にどの工程をどの順で経るかという製法の違いです。ここでは、その工程を一つずつ追いながら、なぜ同じ葉がここまで違う茶になるのかを見ていきます。

萎凋(いちょう)— 水分を抜き、香りの土台を作る

摘んだ葉は水分が多く、そのままでは加工が進みません。萎凋は葉を日陰や涼しい場所に広げ、しんなりするまで水分を飛ばす工程です。この段階で葉の細胞がわずかに傷み、香りの前駆物質が動き始めるとされています。白茶や青茶(烏龍茶)、紅茶は萎凋を長めにとることが多く、緑茶では比較的短く済ませるか省略されることもあります。

殺青(さっせい)— 酸化を止める、あるいは止めない選択

殺青は加熱によって酸化酵素の働きを止める工程で、鍋で炒る、蒸気を当てる、機械で高温の風を当てるなど地域や作り手によって手法が異なります。緑茶はこの殺青を早い段階で行うことで酸化をほぼ止め、青々とした香りを保ちます。黄茶も殺青を行いますが、そのあとに悶黄(もんこう)という蒸らしの工程を挟む点が緑茶と異なります。一方、紅茶は萎凋・揉捻のあとまで殺青を行わず、酸化を最後まで進めてから加熱して工程を止めます。

揉捻(じゅうねん)— 葉を揉んで酸化と抽出のされ方を変える

揉捻は葉を揉んで細胞を壊し、内部の成分を表面に出す工程です。強く揉むほど酸化が進みやすくなり、また熱湯を注いだときに成分が出やすくなります。青茶では揉捻と酸化を繰り返しながら茶葉の縁だけを酸化させる作り方が広く知られており、これが葉の縁が赤みを帯び、中心が緑を残す「緑葉紅鑲辺」と呼ばれる見た目につながるとされています。

酸化(発酵)— 進める、止める、あるいは別の発酵に委ねる

ここまでの工程を経て、六大茶類は酸化の度合いによっておおまかに並べて説明されることがよくあります。緑茶・白茶は酸化がごく浅く、黄茶もそれに近い水準、青茶は軽度から重度まで幅があり、紅茶はほぼ完全に酸化させます。もっとも黒茶だけはこの並びに素直に収まりません。殺青と乾燥のあとに渥堆(あくたい)という工程を経て、微生物による後発酵で風味を変えるため、葉自身の酵素による酸化とは別の仕組みが働いています。黒茶を「もっとも発酵が進んだ茶」とひとまとめに説明するのは分かりやすい一方で、正確には性格の異なる発酵だと理解しておくほうが誤解を避けられます。

焙煎(ばいせん)と乾燥 — 仕上げが香りをもう一段変える

乾燥は保存性を高めるための最終工程ですが、青茶や一部の黒茶では乾燥後にあらためて焙煎をかけ、火入れの強さによって香ばしさや甘みの表れ方を調整することがあります。同じ産地・同じ木の葉であっても、焙煎の深さが違うだけで香りの印象は大きく変わります。こうした違いを実際に嗅ぎ分ける練習は香りを言葉にする記事でも扱っています。

次の一歩

製法の違いを工程ごとに追うと、六大茶類の分類がただのラベルではなく、実際の手仕事の積み重ねであることが見えてきます。次に読む記事として、緑・白・黄・青・紅・黒の全体像を整理した記事と、アロマの表現と練習を扱った記事をおすすめします。

参考文献

  • Kevin Gascoyne, François Marchand, Jasmin Desharnais, Hugo Américi. "Tea: History, Terroirs, Varieties." Firefly Books, 2014.
  • 中国国家标准化管理委员会. GB/T 30766-2014「茶叶分类」.
  • Encyclopaedia Britannica, "tea" (beverage) entry.

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